ゆめ、宙に浮かぶ

おれは六十過ぎの男だった。金も健康も身よりもない白髪の男で、若く激しい性格の女に命を付け狙われている。
目鼻立ちのはっきりした長い黒髪のうつくしい女だった。
なぜ彼女は俺を追いかけるのか、わかりたくないし、共感もできない。
彼女はいう。
愛してるからよ、それだけ。それ以上の説明はできないわ。愛してるのにあなたはわたしをはねつけたからよ。
薄暗い靄がかった針葉樹の道を、宙に浮かびながらもがくように進む。
両脚の膝から下は白い骨になっていた。
この生活では医者にかかる金もない。