読書、雪男たち

「雪男たちの国」を読んだ。
南極へ行き気が狂ってしまった男が書き残した手記を元にしたフィクション。
スコット探検隊を題材にしたジョージ・ベルテンの本で、隊長のスコット大佐が良い。
タルコフスキー監督の映画「ソラリス」に似ている。
時間も空間も超越した場所で、最も強く望む幻覚がとても人間らしい。
雪原に現れる妻や、恋人の幻や、汽車。
狂っていく男達の中で、スコット大佐だけが現実以外のものを拒否しようとする。
そのスコット大佐もついに幻の汽車に乗って行ってしまう。
あとには狂ったジョージ・ベルテンだけがとり残される...

眠れない、眠れない

川の音がする薄暗い木々の間を歩き回る。脚を止める、屈んでクサソテツを採る、一本、二本。背中の籠に入れる。湿った柔らかい苔の上に生い茂るクサソテツが川の縁まで広がっている。

海の中に飛び込む、濁って渦巻く泡。互いに叫びあって反対側の堤防まで水をかき、仰向けになって水面に浮かぶ。じりじりと顔の皮膚を焼く太陽。彼女の手が伸びてくるので握り返す。水の中、手を握り合って笑う。

ゆめ、だからいっしょに走って逃げて

ルームメイトの女の子とベッドでキスしていた。
彼女は淡い茶色に染めたふわふわの長い髪と、珍しいグレーの神秘的な目をしてる。明るい日の下で見るとちょっとだけ目元が猫に似てる。
チャイムが鳴る。
下着姿で、仕方なく私がドア穴から外をのぞく。
見たくない顔だった。とんでもなく仕方なしに細くドアを開けると猫がするっと外に出て行ってしまう。
玄関先でよく知らない男に罵りと平手打ちを受けてなんだかぼんやりしてしまう。

彼女には恋人がいる。
私はこの国の言葉がまだほとんど話せない。でも大まかな意味はわかる。

バスルームで泣いてる私を彼女は慰めてくれる。


彼女はありのままのわたしを最高だと言ってくれる。
いつものように、微笑みながら彼女は言う。
わたしから見たらあなたは充分完璧よ。だから自分を簡単に卑下したりしないで。